吉野杉の山へ ~Vol.3
杉によって育まれてきた文化があると思っているんですー
樹齢200年を超える杉は、その色も深みを増し、それを扱う作者にとって全く別のものになるという。
聖山の坪岡さんは、清光林業さんが大切に維持し、次代に繋いでこられた山の木を、自らデザインし、現代の暮らしに求められる形にする。
古来より日本の丁寧な山作りは、茶の湯など日本の美しい文化の苗床になってきたのだと思いますー
その時の流れをも凝縮するような、美しい杉の作品を前に 深く呼吸する。
柾目を用いた作品。 凛とした 清々しい そんな言葉に自然とつながる。
丁寧に素材と向き合えば、自ずと、凛と佇む杉らしい作品が出来上がる
お茶室の清々しい空気、背筋が正されるような、心地よく繊細な日本らしさは、素材と共に人々が育んできたものー
なるほどなあと、吉野の杉林を思いだす。
製材所の一角に別空間が。特別な空気が流れる。
住宅建材としての需要が、海外からの安い材木に押され振るわない今、
しかしその大切さや美しさを伝え続け、世に送り出していきたい。
そこには、純粋な作り手としての想いだけでなく、山を、技術を守っていかなければならないという深い想いが重なる。
坪岡さんとの再会は松屋銀座にあるナラテイバンで。
ロングセラーを目指すモノづくり「奈良ブランド開発支援事業」の一環で、ブランドも担い手も共に成長する、その構想自体すばらしく、全国に先がけ表彰されている。
京都はカラコロとお店もどんどん新しくなったりするけど、奈良は昔から変わらんよねー
「新しさよりも普遍性に価値をおき、作る人も使う人もお互いに愛着を感じる “ロングセラーを目指すモノづくり“」
なるほど、奈良はTEIBANも掲げる通り、普遍性を目指す土地柄なのかもしれない。
接客にも忙しい坪岡さんの貴重なお時間を頂きながら、たくさんのお話の中で、全く別の印象で残ったものがある。
杉は、200歳に近くなる頃から、光合成によって放出する酸素よりも、細胞の呼吸による二酸化炭素の方が多くなるという。
つまり、生物としても進化する、ということではないだろうか!
吉野の山の神々しい木々を想いながら、
「人に近くなるのか、精霊が宿るのかー」そんな想像が止まらない。
吉野で今、200年を超える木々を育てる山主さんは少ない。