杉によって育まれてきた文化があると思っているんですー
樹齢200年を超える杉は、その色も深みを増し、それを扱う作者にとって全く別のものになるという。
聖山の坪岡さんは、清光林業さんが大切に維持し、次代に繋いでこられた山の木を、自らデザインし、現代の暮らしに求められる形にする。
古来より日本の丁寧な山作りは、茶の湯など日本の美しい文化の苗床になってきたのだと思いますー
その時の流れをも凝縮するような、美しい杉の作品を前に 深く呼吸する。
丁寧に素材と向き合えば、自ずと、凛と佇む杉らしい作品が出来上がる
お茶室の清々しい空気、背筋が正されるような、心地よく繊細な日本らしさは、素材と共に人々が育んできたものー
なるほどなあと、吉野の杉林を思いだす。
住宅建材としての需要が、海外からの安い材木に押され振るわない今、
しかしその大切さや美しさを伝え続け、世に送り出していきたい。
そこには、純粋な作り手としての想いだけでなく、山を、技術を守っていかなければならないという深い想いが重なる。
坪岡さんとの再会は松屋銀座にあるナラテイバンで。
ロングセラーを目指すモノづくり「奈良ブランド開発支援事業」の一環で、ブランドも担い手も共に成長する、その構想自体すばらしく、全国に先がけ表彰されている。
京都はカラコロとお店もどんどん新しくなったりするけど、奈良は昔から変わらんよねー
「新しさよりも普遍性に価値をおき、作る人も使う人もお互いに愛着を感じる “ロングセラーを目指すモノづくり“」
なるほど、奈良はTEIBANも掲げる通り、普遍性を目指す土地柄なのかもしれない。
接客にも忙しい坪岡さんの貴重なお時間を頂きながら、たくさんのお話の中で、全く別の印象で残ったものがある。
杉は、200歳に近くなる頃から、光合成によって放出する酸素よりも、細胞の呼吸による二酸化炭素の方が多くなるという。
つまり、生物としても進化する、ということではないだろうか!
吉野の山の神々しい木々を想いながら、
「人に近くなるのか、精霊が宿るのかー」そんな想像が止まらない。
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道を利用し、山へ入り、木を切り出す。
道があるから、新たに人が山に入っていける。
山は硬いところと柔らかいところがあり、どこを選んで道をつけるかが大切で、岡橋社長もこの技術を受け継ぎ、自ら20km の道を10年かけ整備されてこられたという。
山を育み続けた先人達が、山と平野をつなぐ要として、伝え続けた技術なのだろう。
実際につくられた道を通って、いよいよ山林へご案内頂くことになった。
その道はー 運転して下さったスタッフの方の腕に感動しつつ、ゴーカートさながらの揺れ、
本当に手作りの道なのですね、と思う間もなく、あっという間に山深くー
吉野特有の密植間伐によって育てられる木々は、
立派なものは樹齢300年と、その堂々たる姿は神々しくさえある。
どの杉林にも、綺麗に陽の光が差し込み、
清らかな光、清光林業のお名前はここから来るのかと深く頷いた。
まだ若く見える林も、樹齢100年をゆうに超える。
まさしく未来へ向けた仕事で、先人が育ててきた杉を、何世代目かにあたる岡橋社長が切り出す。
そして苗を植えるー
苗は、この地の大木の種で実生(みしょう)から育てられ、ある程度の大きさになった後に、山に植えられるそうだ。
小さいうちは、鹿などに食べられてしまうらしい。
発芽したての小さな杉の赤ちゃんを、
大きくなったら会社の敷地に植えるのだと大切に抱えて大喜びの帰路。
この杉が大きく育つ頃には、代替わりしているのだなあと、
後から未来を思った。
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事務所に入ると、ふわっと杉の良い香りに包まれる。
清光林業さんの川上村の事務所は、床も壁も全て杉の内装。
日頃からお送り頂いたリスト&フット・レスト+ハンディ・バーテーションを小さな事務所スペースとしている身にとって、もう夢のスペースである。
木口スリットのパーテーションが、柔らかい日に包まれてまた光を放っているようだった。
慣れ親しんだ山林風景が、人工林であったことを知ったのはここ10年くらいのことで、国内の人工林は全森林の4割を越え、総国土面積の2割以上を占めるらしい。
1950~60年代の木材調達を目的とした造林の一大ブームの後、海外からの安い木材に押され、これら人工林の多くが今、手入れをされることなしに放置されているという。
日の光が差し込み、いきいきと草木が色づく森を蘇らせるとりくみと誘われ、
”皮むき間伐”に参加したのが昨日のことのように思い出された。
そんなブームの遥か昔から、吉野の山で林業を営まれてきた清光林業の岡橋社長は、なんと18代目、単純計算しても360年??
500年続くという吉野林業の担い手は、山を所有する山主、管理する山守、作業、技術を担当する山行に分業されてきたが、今では直営化も進み、清光林業もその必要性を感じ、早くに転向した山主の一人という。
広い敷地内には積み重ねられた丸太が、日の光を浴びながら並んでいる。
これらは住宅建材に向かなかった間伐材で、バイオマス発電所の燃料、チップ材となるそうだ。
他にも何か作り出せる筈だよね、そんな会話から、
メディ・フュージもこの宝を世に広げる、小さな山守として参加させて頂くことに。
山を守るー それは私たちの暮らしを守ることでもあり、今この時代においては、みんなで、大切に、繋いていかなければならないバトンに違いない。
清光林業さんの宝の森を訪ねてー 3回に分けてお届けします。
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